お兄ちゃんが入院を回避する為に、無理をして登校した中1三学期の始業式。
9ヵ月ぶりの登校で、しかも車椅子。入院を勧められているような状態だったので、学校側も登校受け入れをかなり慎重に検討し、保護者付き添いというのが条件での登校でした。
この頃の様子が日記に残っていたので、ここに掲載したいと思います。
去年の4月にお兄ちゃんが倒れてから9カ月。
とても長く苦しい日々だったね。
今もまだ歩くのもおぼつかなく、車椅子のお兄ちゃん。
1月10日の始業式の日、どうしても学校に行くと言って立ち上がったお兄ちゃん。
まさか本当に学校に行けるなんて思っていなかったから、なんの心の準備もないままバタバタとお兄ちゃんを車に乗せ、学校へ。
学校の先生は突然の来訪に驚きながらも、まだ青白い顔をしているお兄ちゃんに配慮して、始業式は二階の応援席から参加することに。
毛布に包まった状態で車椅子に乗り、始業式の様子をお兄ちゃんと一緒に見ているのが、夢なのか現実なのか、にわかには信じられない思い。
お兄ちゃんが学ラン着て○○中に来てる
昨日まで寝たきりで家にいたお兄ちゃんが学校に来てる
中学の入学式から四日目で家に帰ってきてしまったお兄ちゃんの時間は止まったままだったから・・・
目の前の始業式の様子は、あの日の入学式の様子と重なったりはしてないだろうか?
お兄ちゃんは今どんな気持ちで始業式を見ているんだろう?
心配な気持ちと、喜びと、信じられないという気持ちが入り乱れた複雑な感情。
長い始業式の間、二階の応援席の床に横になりながら、なんとか最後までしのぎ、それで満足して帰るのかと思いきや、「F組に行く」というお兄ちゃん。
「本当に??」と聞き返してしまった。
今日学校に来た事も、これからF組に行く事も、何も打ち合わせなく、しらっとした顔で言ってくるお兄ちゃんにただただ驚かされるばかり。
皆が移動する前にF組に行こう!という事で、まだ誰もいない校舎の廊下をお兄ちゃんの車椅子を押して歩いている時、涙が出そうになってしまった。
こんな日が突然やってくるなんて・・・
まだまだ先と思っていたF組への復帰がこんなに突然やってくるなんて・・・
どんな顔して入っていったらいいんだろう・・・
皆どんな反応するのかな・・・
私の事じゃないのに、緊張しちゃう。。。
初めて入るF組。
まだ誰もいない教室にお兄ちゃんと2人。
そこから見える富士山は真っ白な雪景色だった。
晴れ渡る青い空に綺麗な富士山を見た時、一気に未来が開かれたようなそんな気分だった。
久しぶりに味わった爽やかな気持ち
空が綺麗
光がキラキラ輝いて見える
昨日まで見ていたのと同じ世界とは思えない清々しい気持ち
その景色を見ながら、教室の奥で皆を待つことに。
ガヤガヤと賑やかな声と共に皆が戻ってきた。
車椅子で待っているお兄ちゃんを見つけ、驚いている子。
「久しぶりだね♪」と話しかけてくれる子。
「おう!」と照れ臭そうに声をかけてくれる子。
顔も知らない子も大勢いる中で、お兄ちゃんは嬉しそう
少しだけ挨拶をしてF組を出ると、次の移動の為他のクラスの子達が廊下に並んでいた。
そんな中を車椅子のお兄ちゃんが通ると、二列に並んでいた列が開かれ、皆がお兄ちゃんに声をかけてくれて、まるで凱旋帰国したヒーローのような照れ臭い状況。
こんなにも沢山のお友達に声をかけてもらって、お兄ちゃんの心はどれだけ弾んでいる事だろう。
嬉しくもあり、恥ずかしくもあり、なんとも言えないこそばゆい気持ち?
けど、喜びの裏にある大きな不安。。。
お兄ちゃんのこの行動は入院を回避したいが為に無理してるだけ。。。
今のお兄ちゃんは車椅子でさえも、一時間と座っていられないのだから。
私たちの気持ちとしては、お兄ちゃんの体が一番大事。
何よりも早く体を治す事を最優先に考えてほしい。
だけど始業式をクリアしたお兄ちゃんは、とっても誇らしげ。
その日から三日後の小児総合医療センターでの受診では、
「自分で歩いて学校に行ったのでなければ、学校に行ったとは言えない」
と、釘を刺されてしまったけれど、お兄ちゃんの思惑通り入院は回避してしまった。
この先どうなってしまうのだろう・・と、親の心配もよそに、
お兄ちゃんは毎日学校に行くようになりました。
学校に行くと、やんちゃだった子達がお兄ちゃんのお世話をしてくれたり、可愛い女の子が挨拶してくれたり、話しかけてくれたりと、皆が温かい気持ちで迎え入れてくれて、お兄ちゃんの居場所を作ってくれてる
なんて素敵なクラス
学校に行くようになったお兄ちゃんは、よく笑うようになった
元々は笑い上戸だったお兄ちゃん、4月に倒れてからはあまり笑う事もなく、目はキッと吊り上がり辛くて苦しい表情ばかりだったけど、昔のお兄ちゃんが戻ってきた感じ
目がころんと丸くて優しいお兄ちゃんの顔が見れて本当に嬉しい。
ずっと体を治す事だけを考えてきていたから、学校に行くなんてまだまだ先の事と思っていたけれど、学校に行けた事がお兄ちゃんの自信になり、待っていてくれた友達がいてくれた事がこんなにも大きな力になってお兄ちゃんを元気にしてくれているのが本当に嬉しかった。
始業式の日に突然学校に行くと言った時、そして実際に行った後も、お兄ちゃんは入院から逃げているだけだと思っていたから、おもいっきり褒めてやる事が出来なくて本当にごめんね。
病は気からっていうけれど、
体を治してから→学校ではなく、
学校行きながらパワー充電して→完治。
こんなパターンも、ありなのかもしれないね。
どんな形でもいい。
とにかくお兄ちゃんが元気になってくれたらそれでいいんだもの。
私もお父さんも、お兄ちゃんが幸せになってくれるなら、どんな事でもしてあげたい。
それが私たちの幸せ。
けど・・・こんな状態でお兄ちゃんの無理が続く訳もなく、本当の復学はここから一年後の中三の春。車椅子での復学でした。
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